写真について 沸騰篇 第六回

写真について 沸騰篇 第六回

僕は、音楽を始めて、まだ、一年経っていない。
秋になったら、一年が経過したことになるだろう。
僕が音楽を始めたのは、一人の女友達の為であった。

その時、僕は、友人に写真を教えていた。
そして、ふっと、僕はこの友人に対して、偉そうだな、偉そうなのかも知れない、と思って、苦手な、未知なる音楽を一人で始めて、サウンドクラウドにアップすることにした。
僕は、音楽ならば、偉そうにならないだろう、僕も、友人が未知なる写真を始めたように、音楽を始めれば、同じ立場に立てるのでないか、と思ったからである。

最初、僕は、電子キーボード、ハーモニカ、鉄琴、カリンバなどを用いて、曲を演奏していた。
演奏、といっても、ただ、デタラメに音を出していただけである。
それは、ギターをやっている別の友人に、下手くそだと言われて、そのまま、というものだったのだが(別の友人は、子供の演奏のようだ、と感動して何度も聞いていたが)、ある日、シンセサイザーに手を出して、あるいは、iPhoneシンセサイザーのアプリを使い始めてから、僕の音楽に対して、僕に直接、下手くそだと言う人はいなくなった。
シンセサイザーとの出会いが、僕の音楽を変えた。

実際のところ、僕は、演奏している、とあまり自分では思っていない。
ただ、音を出している。
音を出して、音と音を組み合わせている、という方がしっくりくる。
演奏とは、音を出すことなのだが、あるいは、音を奏でることなのだが、僕は正直、シンセサイザーが楽器だとは思えないのだ。
それは、音楽に関して、そういう教育を受けてこなかったからかも知れない。
楽器とは、リコーダーや鍵盤ハーモニカに代表されるように、自分の息と指先が連動して演奏される原始的(アナログ)なものであって、シンセサイザーは、自分の呼吸とは関係がないし、ピアノなどのように、指先の微妙な強弱を音色にあまり反映しない。
だいたい僕は、ニンテンドーDSシンセサイザーのソフトや、iPhoneのアプリ、カオシレーターしか使っていない。
後は、相変わらず下手くそなのだが、安価な電子キーボードを一つ、購入したぐらいで。
電子キーボードはともかく、ニンテンドーDSiPhoneカオシレーターを、僕は、今だに楽器だとはあまり思えない。
それは、音を奏でる機械装置であり、四角い箱である。
楽器というよりかは、機械装置、という方がしっくりくる。

そもそも、僕は、すでにして、自分が音楽をやっているとはほとんど思っていない。
ただ、僕は、音を組み合わせているだけである。
それは、後述するが、舞台を作っているに等しい。
舞台、風景、背景を作り出しているのであって、僕は自分のことを、演者=演奏者だとは思えない。

友人に写真をやるように唆したのは、他ならぬ僕である。
写真なんてめんどくさいこと考えなくても、ボタンを押せば撮れるよ、と、嘘ではないのだが、人によっては嘘に近いことを囁いて、その気になってしまった友人は、デジカメを買って、写真を撮っていく中で苦しむ羽目になる。

友人の話をするが、友人は当初、詩らしきものを、書き始めて、現代詩フォーラムに投稿していたのであった。
その作品を読んで、僕は、詩をやめて、写真をおやりなさい、と上から目線で言い放ったのである。
友人の詩を、べた褒めしていた人もいるみたいなのだが、それは、ただ、錯綜するだけの自己規定であり、続けたところで錯乱し、よくて、太陽曰く燃えよカオスニャル子さん)、となるだけなのは明白であった。
いや、太陽曰く燃えよカオスになるのであれば、それはそれで、凄まじいことなのだが、多分、うー、にゃー、とは言えないであろう。
SUN値ピンチ! とも言わないだろう。
つまり、畑亜貴にはなれないだろう(誰もなれそうにないが)。
錯綜し、消耗し、行き詰まる時が来た時に、詩人ではない僕ではどうしもうもないな、そこいらにいる詩人、あるいは、詩人になりたい人ならば、放っておいてもいいのだが、放っておいた方が、その人のラブアンドピースになるのだろうけど、ラブクラフトではそうはならないのである。
それぐらいのことを考えての、写真をおやりなさい、という発言だったのだが(多分)、この友人が強く望み、今でも望んでいることは、自分とは何者なのかをこの世で現したい、ということに他ならず、それが、アイドルならば、それはそれなのだが、どうも、アイドルではなく、バックグラウンド=背景だったので、話はややこしく、錯綜すべきところで錯綜し、遁走し、世界線を彷徨うことになるのであった。

つまり、アイドルとは、アイドルを演じる者を指すのである。
そして、それをアイドルだと認める人たちで成り立っているのだ。

前回と今回、僕は、かなり核心的なことを書いている。
それは、僕の頭が沸騰している、ということにしてもらえれば幸いなのだが、そして、確信的だからこそ、個人名を一切出さないのだが、話は予想よりも長くなったので、続きは次回。