腹立ち日記

腹立ち日記

久しぶりに撮影していて頭にきた。
今日は朝から昼過ぎまで、挙式と披露宴のエンディングロール用のスティル撮影の依頼があったので、とあるホテルで撮影してきた。
撮影自体は問題なく、いつも通りに撮影データを納めて、定食屋で昼ごはんを食べて帰宅したのだが、ここのホテルに入っているテナントの写真室のカメラマンの態度が酷いのである。

ここのホテルには、今まで、エンドロールの撮影では、今日を合わせて、二回、入らせてもらった。
そして、二回とも、そうとう酷い態度だった。
僕のクレームは、依頼先のビデオ映像会社の社員に伝えてあるのだが、もし、今度、同じホテルの撮影で、同じように、写真室のスナップカメラマンの態度が酷かったら、そのカメラマンに直接言うか、今後、ここのホテルの撮影をお断りさせてもらうか、どちらかにはしようと思っている。多分、僕はもう我慢できないだろう。

前回は、僕と同じ歳ぐらいの女性カメラマンで、当日、その女性が高熱だった、というのもあるとは思うが、あからさまに神経質で、譲り合いの精神というものは一切感じられなかった。今日は、年配の男性カメラマンで、撮影前は、普通の感じだったのに、撮影に入ると、お客様の写真撮影及びにデジタルアルバムのご要望がすごく多かったようなので、そういうことも影響しているとは思われるが、こちらに対する譲り合いとか、助け合いの精神がまったく感じられなかった。

写真というのは、撮影ポイントが限られてくる。
分かりやすくいえば、名所の撮影みたいなものだろうか。
名所の撮影の場合は、早い者勝ちだと思う。
婚礼スナップの場合は、早い者勝ち、というわけにはいかない。
それでは、どちらかが、いい写真、いい動画(ビデオの場合)を撮り損ねて、お客様からクレームを受けてしまう可能性がある。
だから、同じ挙式と披露宴の撮影を行うカメラマン同士というのは、ある種のチームプレイ、譲り合い、助け合いの精神が求められる。

今日、僕がキレたタイミングは、挙式で、新郎新婦が入場してくるところを撮影していた時に、写真室のスティルカメラマンが、エンドロールの撮影なんだからそんなに粘って撮らなくてもいいでしょ(だからさっさと退いて、こちらの邪魔をしないでね、というニュアンスで)、と小声で囁いてきたからである。
確かに、エンドロールの撮影は、デジタルアルバム用のスナップ撮影よりも、写真の精度、レベルは求められていない。婚礼カメラマンからしたら、たかがエンドロール、という、ある種の事実であり、職業差別があることも、僕は否定しない。
はっきり言ってしまえば、エンドロール用の写真なんて、写っていればいい、ぐらいのものでも十分ではあるだろう。

そういうことを踏まえた上で、それでも、別会社の人間に、そういう指図を受けるのはおかしな話で、エンドロール撮影を依頼してきたビデオ映像会社の社員などが、僕に対して、エンドロールなんて写っていればいいから、写りの出来は気にせずに、他のスタッフの邪魔に絶対にならないようにしてください、などと仰るのであれば、僕はそれに従うしかないし、従おうと素直に思う。
ホテルの写真室にいる写真館と、僕に依頼してきたビデオ映像会社には、関わりがない。下請けだとか、そういう上下関係もない。まったくもって別会社だと、僕は確認している。
別会社の人間が、エンドロール用の写真撮影だから手を抜け、と指図をしてくるのは、かなりおかしな話ではある。
言ってしまえば、常識がない、失礼な話にしかならない。

今のところ、こんなに失礼なことを言ってきたりする写真室は、ここしかない。別のホテルや、レストランで一緒になる別会社のスティルカメラマンとは、譲り合い、助け合いの精神で、トラブルなく、撮影が出来ている。

こちらがカメラを構えて撮影しているのに、平気でカメラの前に来て撮影をするカメラマンなんて、そんなにはいないはずだ。
普通、ごめんね、とか小声で言ったり、せめて、申し訳ない感じでちょっと頭を下げたりするものである。

僕は、婚礼写真では、ポーズ写真(集合写真など)、挙式・披露宴スナップも仕事で受けてやっている。エンドロールの撮影は、確かに、普通のフリーカメラマンは受けない仕事ではある。とあるビデオ映像会社では、写真の素人にコンパクトデジタルカメラを渡して、それで済ませていることを、僕は知っている。
それぐらい、程度が低いというか、写真撮影の技術を求められていない。

僕は、いつも、自前のCanonデジタル一眼レフと、CanonのLレンズ(高級レンズ)、ストロボを持ってきて、エンドロールの撮影を行っている。そんなことはしなくてもいいかも知れない。ビデオ映像会社が貸してくれるCanonのデジタルキスと、ズームキットのレンズだけでも、エンドロールを制作することは出来るであろう。正直、カメラのスペックや、レンズの描写能力などは、それほど問題ではない。そんなものは、よく見なければ分からないもので、プロジェクターに数秒投影されるだけの画像を、そういう目で見ている人は、あまりいないはずだから。しかし、デジタルカメラに内臓されたストロボで撮影したものと、外付けのストロボを付けて天井バウンス発光させて撮影したものとでは、写りが明確に変化
する。

ストロボの光を被写体に直接当てたものと、ストロボの光を天井に反射させて撮影したものでは、写りの自然さにおいて、雲泥の差が生じる。現在の婚礼スナップでは、直接ストロボの光を被写体に当てて撮影することは、ほぼ皆無で、天井バウンスを用いて撮影が行われている。

僕は、エンドロールの撮影だと言って、手は抜かないようにしている。というよりも、手を抜けないのかも知れない。依頼主のビデオ映像会社が、手を抜いてください、と言ってくれば、僕は、それに従うだろう。そこまで意固地になる必要はないから。

僕は、エンドロールの撮影で、五百枚以上、撮影をしている。他のスタッフは、どうやら、二百枚ぐらい、撮影をしているようだ。僕は、他のスタッフよりも、明らかに撮影枚数が多い。多すぎるぐらいだ。だから、撮影が終わった後とかに、エンドロールの編集を行う人に、枚数は多いですか? と聞くようにしている。枚数が多いと、それをセレクトするのが面倒になることぐらい、僕は知っているから。
編集を行っているスタッフは、そのことで、僕に、撮影枚数を減らして欲しい、と仰ったことは一度もなかったはずだ。
だいたいの人は、半分お世辞だとしても、いい写真が多くてセレクトが大変ですよ、なんて微笑みながら仰ってくれるので、こちらは、手を抜かずに、エンドロールに相応しいであろう写真を撮影している。

撮影枚数が多くなるのは、主に二点だろう。
・連写機能を使って、連写しているから
・参列者、参加者の取りこぼしがないように、そこにいる全員の写真を撮っているから

連写している理由は、連写しない理由がないからで、失敗が許されないスナップ撮影の場合は、連写にした方がいい。そして、婚礼スナップは、失敗が許されない撮影である。
それは、まず、目つぶりの写真を減らすためである。そして、出来るだけ、いい表情、笑顔を撮りたいから、連写にしている。
いい表情の撮り方、というのはある。それを説明すると長くなるから、ここではしないけど。単純な話ではないから。間、というのが重要になってくる。簡単に言うと、被写体の緊張をどれだけ和らげるか、緊張がほぐれれば、笑顔になる。

参列者、参加者の全員の写真を撮りこぼしがなく撮影しているのは、撮りこぼしがないことが理想だと、最初の説明で聞いたからである。
説明を聞いた段階では、それは理想だけど、なかなか実現できない、みたいなニュアンスで語っていたように記憶しているけど、ちょっとコツを覚えれば、それはそんなに難しいことではなかった。
僕は、親族紹介をする前の控え室にいる親族の方達、挙式中に参列している人達、披露宴中に参加している人達、と三回、その場にいる全員を撮影するようにしている。自ずと撮影枚数は増えてしまう。

手を抜く、ということは、いつだって出来る。
依頼主から、手を抜いてくれ、と言われれば、出来る。
エンドロールだから適当でいいや、と自分で思えば、出来る。
最初の段階で、手を抜いて撮影したとしても、そのことで、依頼主に怒られるということはなかったであろう。
この人の実力はこんなもので、エンドロールはこれだけ撮れれば問題ないからいいや、ぐらいに依頼主の会社の人達に、僕のことは思われていただろう。

最初、僕は、手を抜けなかった。手の抜き方が分からなかった。
それで、依頼先の会社の人たちに褒めてもらって、稀に、ホテルの副支配人が紹介した人の挙式・披露宴、という、普段よりも高いハードルが求められる撮影の依頼も来るようになって、それを問題なくこなしたら、そこのホテルの副支配人が紹介したお客様の挙式・披露宴の撮影を僕が担当させてもらう時に、何も言われなくなった。つまり、いつも通りに撮影すればいい、ということなのだろう。
これは、仕事上の信頼を裏切るわけにはいかないから、手を抜いていない、というのがまずある。

そして、エンドロールの撮影をしていて気が付いたことがある。
披露宴に参加している人達は、けっこう集中して、エンドロールを見ていることに。
結婚式、というものは、新郎新婦のお二人が主役である。通常の婚礼スナップの場合、後でデジタルアルバムを制作することを踏まえて、主役のお二人を中心に撮影をしていく。参加しているお客様よりも、主役のお二人を撮影することが優先される。
エンドロールの撮影は、お二人が主役ではない。お二人の写真は当然撮影するけど、お二人と同等に、参加しているお客様も主役なのである。
披露宴というのは、主役のお二人が中心になって、主軸になって、進行していく。その中で、エンディングロールというのは、脇役であるお客様に対する、主役のお二人のお心遣い、感謝の気持ちが込められている。エンドロールでは、参列し参加したお客様の笑顔がスクリーンに投影される。当然、そこには、自分達が映し出されているから、お客様は集中して見るだろう。けっこう盛り上がったりするのだ。

エンドロールは披露宴のシメである。
お二人が披露宴会場を退場して、残されたお客様の為だけに流される。
シメというのは、何事も大事なものだ。
後々、あの結婚式はよかったな、と思うか、そうではないように思うか、エンドロールは、たかだかエンドロールかも知れないけど、披露宴の大事な役目を負っているのではないか、と僕は感じるようになった。

こちらは仕事なので特別な一日ではないけど、新郎新婦のお二人にとっては、一生に一度であろう、特別な、大切な一日である。そういう初心を忘れてはいけない、と僕はいつも思っている。

僕の中で、エンドロールの撮影をバカにする気持ちはないけど、たかだかエンドロールの撮影だということも、忘れているわけではない。
デジタルアルバムの為に撮影する重責に比べれば、エンドロールの撮影の責任は少ない。だから、僕は、婚礼スナップのカメラマンと同じお客様を担当する時は、出来るだけ、そのカメラマンの撮影の邪魔にならないように気を付けているし、撮影ポイントも譲るようにしている。
別に、こちらが撮影している目の前に、カメラマンが来て、こちらの撮影が上手く出来なくなっても、こちらが少し動いて撮影すればいいだけだし、それでお客様が満足する写真、デジタルアルバムが出来るのならば、別会社のカメラマンだから、こちらとは関係がないといえばないけど、クレームになるよりかは、よほどマシだ。
結婚式の最後に残るものは、デジタルアルバムで、それは紛れもない二人にとってのアリバイになる。シメがいいことが、大事なことなのである。それで、人の印象は大きく変わるから。きれいなデジタルアルバムが手元に残れば、いい結婚式だったな、とお二人はきっと思えるだろう。

今日の撮影で言うと、挙式のキスシーンの時、だいたい、会場の一番後方、バージンロードの手前の中心から撮影するのが定番である。
カメラマンが二人いる時は、お互いの邪魔にならないように、中心ではなく、ちょっと端で撮影するのが、僕の中の常識であったが、そこのカメラマンは、当然のように、ど真ん中に座り込んで、撮影していたので、邪魔であった。

久しぶりに頭に来たので、どうにかやり返してやろうと考えて、一つだけ、些細ながら、やり返しておいた。
披露宴のお二人の入場の時に、僕は、唯一の撮影ポイントを始めに抑えた。写真室のカメラマンは、後からそこの撮影ポイントにやってきて、僕の前に平気な顔をして陣取って撮影するだろう、と予想して。
予想通り、何も言わず、僕のカメラの前にカメラマンがやってきたので、すぐ近くの真横まで行き、写真を撮りながら、小声で、邪魔、と呟いておいた。
本当は、背中を蹴っ飛ばしてもよかったのだが、それだと依頼先の会社に迷惑をかけるだろうから、呟くぐらいにしておいた。
普通だったら、すいません、とか、無言だとしてもちょっと頭をこちらに下げながら前に来るものなんだけどね。こちらの撮影の邪魔をしているわけだから。
同じ会社の先輩後輩の間柄じゃないんだからさ。
もし僕が逆の立場なら、そうするけど。
そして、もし、撮影に慣れていない人と一緒になったら、小声で、優しくアドバイスして、それでもダメだったら、後で、ちょっと一緒になったカメラマンの依頼主の会社の社員とかに言うぐらいにするけど。
何故なら、別会社の人だから、こちらが親身になる必要はないし、だからといって、足を引っ張りたいわけでもないから。もしそのことでお客様とかからクレームが入っても、別会社の僕には関係がない。だから、言っても無駄だと分かったら、もう何も言わないし、言う必要も感じない。撮影で失敗してしまっても、これは、僕の撮影とは関係がないし。だからといって、他人の失敗を望んでいるわけではなく、譲り合い、助け合いの精神でお互いに撮影できたら、それが何よりである。

もし、また、今日と同じホテルで、同じ写真室の別のカメラマンが、同じような態度でいたら、僕は、依頼先の会社にクレームを出して、改善されないようなら、そこのホテルでの撮影をお断りさせてもらうことにしよう。
カメラマン同士、やりあってもいいけど、それは大人の対応ではないし、依頼先の会社に迷惑をかけてしまうだろう。前回と今回で一緒になったカメラマンとまた一緒になったら、相手のことは無視して、こちらの撮影の邪魔をしてきたら、耳元で、邪魔、とか呟くぐらいはしてしまうだろうな。だって、邪魔なんだから。
だから、このホテルの依頼が来たら、そこの写真室のカメラマンとは協力体制で撮影が出来ないと思いますけど構いませんか? と一度、依頼先の会社の人にきちんと質問しておこう。
こういう時は、こちらの頭を低くすれば低くするほどに、相手のカメラマンが付け上がってくる。

エンドロールの撮影だから頑張らなくてもいい、という理屈は分からなくはないけど、別会社のカメラマンにそんなことを言う権利はない。僕は、たかだかエンドロールの撮影だ、と思って撮影をしているわけでもない。与えられた条件の中で、微力ながら、出来るだけいい写真を撮影しようと手を抜かずにやっている。
それは、仕事だから、ということもあるけど、やはり、婚礼写真だから、という気持ちが大きい。
新郎新婦のお二人のことを思うと、手を抜けない気持ちになる。
撮影に不慣れな人間の撮影、写真が未熟なのは、仕方がない。それは、我が身を振り返っても、他人のことを責める気持ちになれない。出来る限りは、関わりない立場だとしても、助けたいとは思う。
これは、カメラマンに限ったことではなく、例えば、ホテルのスタッフで新人アルバイトが何かしたとしても、助けたい、とは思うし、助けられることならば助ける。
披露宴というものに対しての、全体責任、というのを、僕は感じているから。それに、僕は、ホテルの配膳のアルバイトをした経験もあるので、そういうスタッフの立場とかも、少しは理解しているつもりだ。