私が私であるように

私が私であるように

私が私であるように
誰だって
私は世界でたった一人
それでかなしくなったり
うれしくなったりしながら
誰かと言葉を交わす

言葉なんて信じない
という人がいる
私もその一人
心は目に見えず
心とは心という言葉である
言葉は声として発することができるし
文字として目で読むこともできる
でも
愛は言葉ではない

愛とは何だろう?
私は世界でたった一人で
そういう私と私が
いっしょにいること
言葉を交わし合う
じっさいに会ったり
メールをしたり
でも
私たちは言葉というものに託して
もう一人の私に
何かを伝えたいと切実に感じている
目に見えない
何かを
そして私は私から
何かを託されている
ふっと
私の心の中を
ずっと満たしているものがある
それは不思議
としか言えない
だから
もう
愛は信じる信じないではない
愛とは
私そのものなのだから

目で見るというのは
刹那で瞬く残像
見るというのは
心に焼き付いた残像に他ならない
私は切なくなって
手を握り合う
それは
過去の時間の
残像の重なり合いなのかもしれないけど
手のぬくもりは
刹那ではない

目の前には川があり
私たちは水の流れを見ていた
同じ川は現世において
私と同じように
唯一無二の残像の重なり合い
厳密な意味で
同じ水は流れてこない
目に写っているのは川であり続けて
私たちが水を知ることは
川という地形を借りるしかない

(過去作を推敲)