星の子どもたち

赦されたことも赦したこともすべてが霧の中に消え去るときの身の悶えを贖う

雨音の雫の一つ一つを数える

私の宿命と雷雨

水の中で燃えている火

壊されてしまったものを眺める一日の清涼

皿の上に置かれた頭が空を仰ぐ

一足早に立ち去ろうとする背中の震え

純粋なる魂の軽い歩行

砂を噛む淋しさ

一〇

音の連なりが降り積もる夜更け

一一

純粋なる魂の暗さ、黒さを知ること

一二

ゆっくりと下降していく虫の羽音

一三

黄昏時の唇の赤さ、かなしさ

一四

夢、仄光る欠片

一五

貝殻をあつめる子等の手先

一六

つぶやきに似た声を発する、耳を澄ますペディキュア

一七

ピアノを奏でる指先、鋭く柔らかい鍵盤のきらめき

一八

ただ俯いて、仰ぎ見てばかりいる君の横顔

一九

星の子どもたち

二〇

悪い夢がただ、横たわったままで私を見ている

二一

恋をすることが自分を信じることで、恋に落ちることが自失することならば、貼り付けた付箋を剥がせばいい

二二

概ね、かなしみはかなしみの中で綴られている

二三

失われた言葉なんてない、それはすでに砕け散っている

二四

雨が降る、君にも、僕にも

二五

唇から生み出された声は唇に似ている

二六

形にはならない形、自分とは切っても切れない記憶

二七

終着で混ざり合う砂と埃を洗うような星の波紋

二八

暖かい淋しげな体温の街を歩行する

二九

私は君を遺跡を見るときのようにまじまじと見たりはしない、なぜなら、君は遺跡ではなかったからだ

三〇

私のあらゆる困難は閉ざされた、植物のように生い茂りながら

三一

見上げると、背を向けた人々が、夢を紡いでいて、朝から夜へと移り変わり、渦巻く植物が人の心を撫でるとき、風が唇を横切り、雨がすべての風景を濡らしていく

三二

これは鮮やかな一つの過去だ、あの一つから、この一つへと、滴りながら、蹲っている

三三

ゆるやかな水位が上下し、音の記憶を呼び起こすとき、夢は私に反逆しない

三四

あなたはすてきな人だから、きっと、孤独ですてきな人がやってくるだろう、さようなら。

三五

懐かしさとともに、新しい驚きがやってくる

三六

愛とは、さりげない、ときには、みすぼらしい乞食の姿をしている

三七

愛は死なない、忘却を強いられているだけだ

三八

傘ばかり差して空を見上げないから、ため息をつくことも忘れているんじゃないかな

三九

かなしみは誰にとっても親しいものだが、かなしみそのものには色がない

四〇

もう音楽はかなしみが追いつけないような疾駆をしない、かなしみに随想する歩幅で、私たちが辿り着くのを待っている

四一

君はただ、愛されることに慣れ親しみ、堂々としていればいいのだ

四二

私の魂が静かな喧騒の季節を迎える

四三

音楽とは無名の人のためにある

四四

他所事に眼を奪われている君の寝顔

四五

いつも見ている風景、いつも居る場面がたった今、この眼に写っている。
私たちの目覚めのとき。

四六

すべての事象には表と裏があることを知りつつ、暴くことをしようとしない人の指先のぬくもり

四七

壊されてしまったならば、誰かを壊さずにはいられない、子どもたち

四八

もう一度立ち返る、何度でも甦る、目の前の過去の繋がり

四九

美しさは、美しいと感じる人に宿った魂の根元で横たわっている

五十

{戸惑う表情/囀る鳥たち/引き裂いた切っ先}の{不思議/穏やかな響き/ヌメり}

五一

芸術はただの果てにあるものだ

五二

殺してやる、という言葉の意味は、私を殺してください、ということだ
死ねばいいのに、という言葉の意味は、私なんかに生きている価値はない、ということである

五三

他人は自分を写す鏡だとよく言われる。
ならば、自分は他人を写す鏡でもあるのだが、自分に捉われている人は、そのことになかなか気付けない。

五四

人と人とは合わせ鏡のようなものかも知れない

五五

絶対の正しさなんてものはない、したがって、絶対の過ちなんてものもない

五六

灯火を吹き消す口先の淋しさ

五七

パッションがなくて何が人生だ!

五八

あれをいいと言い、あれをよくないと言う人々の間に真実なんてなかった

五九

答えはすでに胸の中にしまわれている、人は人に鍵の役割を求めて逢瀬を繰り返す

六〇

迸る激しさから無声の灯火までの無限を一度に見る

六一

かなしみは怒りに変わり、怒りが虚しさになる
人は虚しさの前で虚しいまま、無力な自分を曝け出す

六二

生理はいつだって無様で、様にならないままの生理が私たちを衝き動かしている

六三

分からない人の分からないには付き合わない、それは分かろうとしていないだけだから。
分かりたいのなら、分かったと思えるまで付き合ってみればいい。

六四

すぐに分かってしまうことはどこか呆気ない

六五

胸の翳り

六六

何もない朝

六七

焦げかけのトースト

六八

人は人の優しさを持て余す

六九

私は優しい人間ではない

七〇

寄せ返す声、一瞬の笑顔。

七一

恋の季節

七二

他人から必要とされないかなしみ、他人によって打ち砕かれたかなしみ、ただ生きているかなしみ。

七三

不用意に落とした涙が夜空で輝く星のような輝きを見せず、午睡の明るい空に散りばめられている。

七四

よろこびとかなしみは仲のよい双子だ、入れ替わり立ち替わりして、人を惑わす子どもたち

七五

どのような言葉を与えても満たされない想いが人の胸を引っ掻く、それは致命傷ではない

七六

かなしき天使

七七

全ての人が幸福を求めつつ、幸福になれるとは限らないし、ハッピーエンドであるとは限らない、そして、不幸だとされてしまいがちな人にも、人生があり、ささやかな幸福がある。

七八

幸福そのものを、他人に伝えたいとは思わない。なぜなら、それをやって、幸福から阻害されているという思いを強くする人も必ずいるだろうから。

七九

幸福の中にも不幸はあるし、不幸の中にも幸福はある、それらは、実際には混ざり合っている

八〇

人は、「密室」を持っているから、複雑で、だから、思うように生きることを難しくしているが、同時に、人生を掛け替えのないものにしているのではないだろうか。「密室」は、他人には知られたくない劣等感が形作った重苦しく鬱陶しいものではある。しかし、だからこそ、人は、その人たり得る。

八一

人はかなしいから、ちょっとした幸せを、喜ぶことができる。人は淋しいから、出会いを求めて、幸福を夢見ることができる。

八二

人はどんなに格好悪くても生きていける。

八三

戸惑いを捨てた人の柔らかい微笑み

八四

「シャツで白く焼け残った肌が日に焼けた頃、本当の友達が現れる」と夢の中で、私は何故か確信していた。

八五

まだ吹いてこない風を感じている

八六

降り止まない雨に濡れて溶けかかるアイスクリームの白さ、甘さ。

八七

眠りは忘却に結びつく、夢で見たことは現実と結びつき、社会生活は夢を忘却へ誘う